もし、私が普通の人形に生まれていたら。
綺麗におめかししてもらってガラスケースからアナタを眺めていたかった。


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「・・・悪いな、毎日毎日ここに入れて・・・」
風影屋敷地下室。
薄暗い、だけど綺麗に片付いた部屋には監禁に近い状態でかくまわれていた。
我愛羅はそんなへと食事を運んでいたが、必要ないとカンクロウと両方に言われてしまい、少し落ち込んでいたが、
やることが何も無い時はこうしてに逢いに来ていた。
一人じゃ、寂しいのは身にしみて分かっていた。
けど、はそんな我愛羅を邪険にするばかりで、あまり口を利かない。
それどころか、「カンクロウは?」と逢いに来もしない兄のことばかりきかれて我愛羅は少し気分を害していた。
「任務中だ・・・。
お前、何でそんなにカンクロウにこだわるんだ?」
一つだけ、上方に申し訳程度に取り付けてある格子状の窓から注ぎ込む光を眺めていただったが、キキと音を立ててこちらを振り向き、口角を上げた。
「私に勝った男は、サソリ様を除いてあの男だけよ」
「・・・もう一度勝負をしたいと?」
こくりと頷き、は顔を険しくした。
「あの男・・・この前は不意打ちで負けちゃったけど、今度やったら負けないわ」
「無理だろ」
「何よ、分からないじゃない」
「傀儡師に傀儡人形が勝てるもんか・・・」
「・・・・」
我愛羅は目を閉じて、数日前のことを思い出した。
カンクロウに襲い掛かったが、敢え無く敗北したは、騒ぎを聞きつけたほかの傀儡隊がよってくる前に我愛羅が瞬身の術で表へと連れ出した。
しばらくして、隊員たちをなだめたカンクロウが帰ってきて、相談した所はここで保護、もとい監禁することになった。
もちろん、は嫌がって力の限り抵抗したが風影と上級の傀儡師二人相手に敵うわけも無く、しぶしぶここに入った。
我愛羅は目を開けて、もう一つの事実を告げた。
「お前に勝ったのはカンクロウだけじゃない。
俺も、勝ったじゃないか・・・」
「ふん、ガキに興味はないわ」
「そうやって・・・」
ふと、我愛羅が消え、慌てたが身を乗り出そうとしたら当の我愛羅に押し倒されていた。
「ガキ扱いすると痛い目を見るぞ。
コレでももう17だ。
しかも風影。色んな女を抱いた」
「く・・・」
髪を掴みあげられ、痛みを感じないはずのだが、屈辱で顔をゆがめることはできた。
「いい顔だ・・・。
俺はお前みたいな気の強い女が顔をゆがめて泣きついてくるのが一番すきなんだ・・・」
「いい趣味してるじゃない・・・」
「褒めてもらったのかな?
・・・あいにく今日は無理みたいだがな・・・」
我愛羅は首を動かさずに目だけを動かし背後を一瞥し、から離れた。
「何もしてないぞ」
「人形に欲情するなんて、流石は俺の弟じゃんよ」
「ふん」
目をあわさずに会話を交わし、我愛羅はいつの間やらそこにいたカンクロウとすれ違った。
ふと立ち止まり、我愛羅が後ろを振り返った。
「毎日来てやればいいじゃないか。
一人は・・・寂しいぞ」
そこでカンクロウは初めて我愛羅と目をあわし、どこか哀しそうな顔をした。
「悪ぃ・・・」
「いいさ・・・」
「やっと来てくれたんだね。嬉しいわ」
階段を上っていく我愛羅を見送っているカンクロウにはその場の雰囲気など気にせずに話しかける。
「さ、ちょっと狭いけれど今ここでこないだの続きをしましょ」
「あ?
ってか、何そんなに禍々しいものもってんの?」
手首のあるべき場所から小型の鉞や又先刀など数々の刃物を覗かせているをカンクロウは人差し指一本で床に平伏させた。
「わっ!」
「よしてくれよ、俺は我愛羅と違って女には優しいんだ」
「優しいんだったら、勝負しなさいよ!
女の願いは聞き入れるべきよ!」
「や、そんなことしたらウチが壊れるし・・・」
しばしにらみ合っていた2人だが、が笑い出したことにより場の空気が一気に和んだ。
「あははははは、本当に面白い子ね。
気に入っちゃったわ。ね、カンクロウは傀儡のほかに何か得意なことあるの?」
「え・・・と?
ギャルハント・・・?」
糸を解いてカンクロウは椅子に座り、と談笑をし始めた。
「・・・あの女、カンクロウの気を引けるのは自分だけだと思うなよ」
我愛羅は、第三の目を物陰に潜ませてカンクロウの今まで見たことの無い笑みを見て、何故だか知らないが激しい嫉妬に燃えていた。
「あの女・・・」
その不穏な気配に、2人は全く気付いていなかった。


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そして、私はガラスケースから、リビングで繰り広げられるあなた達の生活を眺めているの。
リビングは、役者次第で修羅の巷になるの。
私はそれを、微笑みながら観ているの。